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耳鼻咽喉科はカバーする領域が広く,多くのサブスペシャルティ領域から成り立っているのが特徴である。なかでも口腔咽頭領域は,耳鼻咽喉科の重要なサブスペシャルティ領域の1つとしてこれまで発展を遂げてきた。口腔咽頭領域の疾患の多くは直接明視できることから,視診がまず診察の第一歩として重要である。日本口腔・咽頭科学会が監修している本書は,1998年の初版発行の際からイラスト,カラー写真をふんだんに使用し,われわれ耳鼻咽喉科医が口腔咽頭領域の診察をするうえで重要な情報を提供してくれる書として好評を博してきた。
この領域は味覚,摂食,嚥下,構音といった生活の質(QOL)を左右する重要な機能を扱っており,われわれ耳鼻咽喉科医にとってこの領域の疾患を正しく診断し,適切な治療をしていくことは重要な責務の1つである。またこの領域は,免疫学,分子腫瘍学とも関連が深く,ここ数年で急速な進歩がみられた分野でもある。今回の改訂第3版では,それぞれの疾患に関して最近明らかになってきた新たな知見を紹介してくれている。例えば,最近腎臓内科からの紹介が増えてきているIgA腎症との関連性,扁桃摘出術の有効性についても詳細にレビューされており,日常臨床で必要なエッセンスがコンパクトにまとめられている。また,最近新たに登場してきたHIV関連唾液腺疾患,IgG4関連疾患などの疾患概念,さらに社会的にも重要視されている睡眠時無呼吸症候群,嚥下障害などについても多くのページを割き,詳細かつていねいに解説をしてくれている。この領域の良性腫瘍,悪性腫瘍の取り扱いも耳鼻咽喉科医にとって重要であるが,診断から治療までわかりやすく概説されている。また治療,特に手術に関しては,最近は内視鏡を用いたより低侵襲の手術が主流となってきているが,本書はそういった治療面での情報も過不足なくアップデートされている。
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