トピックス 顔面外傷
顔面軟部組織損傷に対する処置の基本的な問題について
楠見 彰
1
,
村上 富美子
1
,
荻野 洋一
1
1聖マリアンナ医科大学形成科学教室
pp.591-598
発行日 1989年8月20日
Published Date 1989/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411200385
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
顔面は血行の豊富なところであり,比較的小さい裂傷であっても血液が顔面に流れると重大な出血に感じられやすい。このために患者や家族は外傷による出血があると不安に陥ることがあるが,ガーゼなどで丹念に血液を拭いて創の程度を明らかにすると,軽度な傷であることが多い。たいていの出血はしばらく圧迫していると止血してくる。また一見絶望的な組織欠損を思わせる創であっても,ジグソーパズルを組み立てるがごとくていねいに組織を元の位置へ戻していくと,欠損がわずかであることをよく経験する。広範囲の軟部組織損傷は交通外傷に合併することが多く,欠損もしくは創の方向性にはある程度の共通性がある。すなわち口唇縁や,外鼻孔縁,眼瞼縁がめくれるように皮膚が剥離していく。自動車のフロントガラスによる損傷では,頬部や額に上向弧状の傷を生じやすい(図1,2)。このような外傷に対して正しい診断と処置法を身につけることにより,術後の結果は十分満足いくものが得られる。
ここでは基本的な顔面軟部組織損傷の処置方法について述べる。
Copyright © 1989, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.