トピックス 頭頸部がん診療の最前線—どこまでわかるか・どこまで治るか
(頭頸部)腫瘍の病理組織診断における免疫組織化学検査の有用性
渡辺 慶一
1
,
堤 寛
1
,
覚道 健一
1
1東海大学医学部病理学教室
pp.19-28
発行日 1988年1月20日
Published Date 1988/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411200094
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はじめに
もともと出筆依頼を受けたタイトルは"臨床検査で頭頸部腫瘍がどこまでわかるか"ということであったが,臨床検査も最近は生化学,遺伝分子生物学,血液学,免疫化学,ウイルス—微生物学など,それぞれの分野に高度なレベルで専門化し,病理形態学者である著者にはとても理解しきれないところまできてしまっている。そこで寛容なる読者諸氏にお許しを願い,解説を著者の守備範囲にある病理組織検査に絞って進めることにする。
病理組織検査の領域でも最近静かにしかし着実に小さな革命が起きつつある。すなわちH&E(ヘマトキシリン・エオシン)染色とごく限られた脂肪,糖,粘液など組織化学,それに電顕観察など,ほぼ純形態学的手法にのみ頼っていた病理学組織検査への免疫組織化学の活?な応川がそれである。この技法の応用によりいろいろな生物活性,機能性物質(酵素,ホルモン,免疫グロブリン,核酸,諸種レセプター,細胞骨格等々)の組織・細胞内存在部位が染め分けられるようになり,組織,細胞の形態学的変化のみならず機能的な変化をも合わせて検出できるようになってきている。その結果純形態学的にはまったく同じ細胞と見なされ判別のつかないものが,機能的には別のものであることがわかったり,また逆に形の違いから別の細胞と思われたものが機能的には同じものであることが明らかにされたり,さらに生化学的・免疫化学的検査との対応,比較検討などが可能になったりなどして,病理組織学にもちょっとした変換,革命がもたらされようとしているわけである。
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