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組織再生工学を応用した中耳疾患の病態解明
Application of tissue engineering to elucidate the pathogenesis of middle ear diseases
田中 康広
1
Yasuhiro Tanaka
1
1獨協医科大学越谷病院耳鼻咽喉科学教室
pp.10-18
発行日 2013年1月20日
Published Date 2013/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411102353
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はじめに
真珠腫性中耳炎や癒着性中耳炎をはじめとする慢性炎症を伴う中耳疾患に関する研究は,これまで動物実験もしくは摘出標本からの免疫組織学的検討によるものがほとんどであった。一方,培養細胞を用いたin vitroでの研究は文献として報告されたものが少なく,現在まで発症機序や成因については明らかにされていない。その原因のひとつとしてin vitroにおいては培養細胞を用いた研究が主体となるが,最近まで三次元的に培養細胞を用いて組織構築を行うことが困難であり,真珠腫性中耳炎や癒着性中耳炎のモデル作製には限界があったことが挙げられる。近年,air-liquid interface methodを用いた培養法によって三次元的に立体構築させる細胞培養が開発され,細胞を気相に触れさせることにより細胞の分化を誘導させることが可能となった。さらに,温度応答性培養皿の出現により,組織構築された培養細胞シートを細胞自体にダメージを与えることなく回収することが可能となり,病変部位への移植についても検討されている。このことは新しく組織構築された培養細胞を用いて,in vitroだけではなくin vivoでの研究にも応用できる可能性を示唆している。
本稿では,これまでにわれわれが行ってきたair-liquid interface methodによる三次元培養皮膚を用いた実験的真珠腫モデルの作製を中心とし,温度応答性培養皿を利用した癒着性中耳炎治療への可能性などについても触れてゆく。
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