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特集 扁桃とアデノイドUpdate
―新しい病態(2)―IgA腎症における病巣感染,扁桃の役割
New pathology(2)The roles of tonsils in the pathogenesis of IgA nephropathy
林 松彦
1
Matsuhiko Hayashi
1
1慶應義塾大学医学部血液浄化・透析センター
pp.809-812
発行日 2012年10月20日
Published Date 2012/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411102294
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Ⅰ はじめに
病巣感染は非常に古くから提唱されている概念であり,ある限局した慢性的な炎症病巣が存在し,その病巣とは直接関係がない遠隔のさまざまな臓器に障害を起こすことを指している。古典的な扁桃による病巣疾患としては,溶連菌感染後急性糸球体腎炎,リウマチ熱などを挙げることができる。溶連菌感染後急性糸球体腎炎は,溶連菌による咽頭・扁桃炎などの感染症罹患後に2週間程度の潜伏期を経て血尿,浮腫,高血圧をきたす比較的予後良好な腎炎である。1960年代まではしばしば集団発生がみられていたが1),そのあとの抗菌薬普及,衛生状況の改善に伴い,その発症は激減し,現在では散発例が時にみられる程度のむしろ稀な疾患となっている。溶連菌感染後急性糸球体腎炎のように明確な関連は証明されていないが,扁桃の慢性炎症が成因に関与している可能性が示唆されている疾患として,IgA腎症を挙げることができる。IgA腎症は1968年にフランスのBergerら2)により初めて報告された,糸球体へのIgA沈着を特徴とする,原発性の糸球体疾患である。ほかに,糸球体にIgA沈着を生じる原発性糸球体疾患は,Schönlein-Henoch紫斑病性腎炎が代表的であり,二次性として肝疾患などでもみられることがある3)。IgA腎症と紫斑病性腎症はきわめて類似した病型をとり,その異同が論議されることがあるが,両者ともに,広い意味での血管炎と理解されている。
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