Japanese
English
Current Article
純音聴力検査の深淵―モデルに基づく再探検への誘い
Labyrinth of pure tone audiometry―invitation to its re-exploration utilizing model simulation
伊藤 健
1
Ken Ito
1
1帝京大学耳鼻咽喉科学教室
pp.609-617
発行日 2012年8月20日
Published Date 2012/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411102250
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
Ⅰ はじめに
1.聴覚医学への入門
耳鼻咽喉科の医師にとって純音聴力検査は大変身近であるのに,聴覚医学は敷居が高いという印象がもたれ入門が敬遠される傾向があるように思える。純音聴力検査は聴覚医学の入り口の「門」という役割を超えて「鳥居」のような象徴的意味合いまで含む必要不可欠な検査であるが,実際には客観的生理検査のように単純明快なものではない。特に骨導検査の場合には検査音がほとんど減衰することなく反対側の蝸牛に伝わるため,必ずマスキングを行わなければならない。むしろ両側の内耳に骨導音を自由に聞かせておいて(骨導振動子の位置はさほど重要ではない),マスキングで非検査側を遮蔽することにより検査側の蝸牛の能力を知るというスタンスこそ本質的であり,骨導検査イコールマスキングであるといえる。この純音聴力検査におけるマスキングは一見単純にみえて実際には理解が容易でないことはよく知られており,初学者に聴覚医学に対する苦手意識を形成させやすい。このような困難を惹起する原因としては以下の点が挙げられる。
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.