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特集 知っておきたい唾液腺疾患
MALTリンパ腫
Mucosa-associated lymphoid tissue lymphoma
岩井 大
1
Hiroshi Iwai
1
1関西医科大学附属滝井病院耳鼻咽喉科
pp.544-550
発行日 2011年7月20日
Published Date 2011/7/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101910
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Ⅰ.はじめに
悪性リンパ腫の発生母地にはリンパ節と節外リンパ装置とがある。この節外リンパ装置は粘膜付属リンパ組織(mucosa-associated lymphoid tissue:MALT)と呼ばれ,リンパ節とは異なる固有のB細胞亜群が存在する。その分布は,粘膜・皮膚・分泌腺などであり,体外環境と接し,抗原の付着や進入の防御機構として作用している。MALTのB細胞はhoming(帰還)現象を示し,例えば胃腸管粘膜のB細胞は腸間膜リンパ節を経由して胸管や末しょう血に入り,循環後に再びB細胞や形質細胞として粘膜に戻る1)。1983年,Isaacsonら2)はこのMALTを母地とする胃腸管のB細胞悪性リンパ腫(MALTリンパ腫あるいはMALToma)の存在を報告した。その後このMALTリンパ腫は,甲状腺・耳下腺・喉頭・皮膚・肺・胸腺・眼窩・膀胱など,いずれも節外リンパ装置を有する臓器(節外臓器)に発生することが報告された。さらに,その組織像・進展様式・生物学的特性は,リンパ節性悪性リンパ腫とは別に1つの疾患単位をなしていることが提唱されている3)。かつて,胃や耳下腺(シェーグレン症候群)での腫瘍性リンパ組織増殖は偽リンパ腫(pseudolymphoma)と呼ばれたが,単クローン性増殖であることが示され,MALTリンパ腫であることが判明している4)。
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