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Ⅰ はじめに
ヒトアデノウイルスはRoweら1)により1953年アデノイド組織から分離されadenoid degeneration agent(A. D. agent)として当初報告された。その後Roweがアデノイド由来のアデノウイルス(Adv)の第一発見者となっている。小児の口蓋扁桃・アデノイドを手術摘出した組織から50~90%アデノウイルスが分離されたことよりアデノウイルス,特にC種(1,2,3,5型)はそれらの組織に長い間潜在的に存在する可能性があるという報告2)がある一方,扁桃より分離できず潜在性に否定的な報告3)もある。Advは直径約80nmの正20面体構造の2本鎖DNAウイルスで,エンベロープをもたないため消毒剤に抵抗を示し物理的に安定したウイルスである。Advは1~51型までの51種の血清型に分類されていたが,最近新たにAdv 52~54型が認められ,そのうち53,54型は流行性角結膜炎に関するものである4,5)。赤血球凝集反応,ウイルスゲノムの物理化学的性状,動物に対する腫瘍原性などによりA~Gの7つの種に分類され血清型とともに感染部位との関係が判明している6,7)。
Advは耳鼻咽喉科領域においても重要なウイルス感染症の一つである。しかしながら,Advのアデノイドに関する研究の進展は遅れていて,眼科,小児科を中心にAdvが探究され,厚生労働省による感染症の全国的なサーベイランス事業としてAdvサーベイランスが流行性角結膜炎(眼科定点),咽頭結膜熱(小児科定点)を対象に行われている。耳鼻咽喉科医にとって一般臨床に必須のウイルスにもかかわらず薄い存在となっているのが現状である。
この項では本特集が耳鼻咽喉科医への細菌,ウイルス性疾患の理解,対応であるため,耳鼻咽喉科医が取り扱うAdv感染症としてワルダイエル咽頭リンパ輪を中心に内視鏡所見を添えて記した。
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