特集 耳鼻咽喉科感染症の完全マスター
Ⅱ.病原体をマスターする
3.ウイルス感染症
4)麻疹ウイルス
藤原 圭志
1
,
古田 康
2
,
福田 諭
1
1北海道大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野
2手稲渓仁会病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科
pp.169-174
発行日 2011年4月30日
Published Date 2011/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101838
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Ⅰ 一般的特徴
麻疹ウイルスはMorbillivirus属Paramyxovirus科のエンベロープを有する直径100~200nmの1本鎖RNAウイルスである。麻疹ウイルスは6つの構造蛋白を有しており,そのうちエンベロープに存在するF(fusion)proteinとH(hemagglutinin)proteinがその病原性に大きくかかわり,F proteinがウイルスと宿主細胞の膜融合を引き起こし,宿主細胞へのウイルスの侵入を可能にしている。麻疹ウイルスはA~Hに分類され,さらに23の遺伝子型に細分される。国内の流行ではD5型が検出されることが多い。
感染経路は空気感染,飛沫感染,接触感染とさまざまであり,気道,鼻腔の粘膜上皮に感染し増殖する。さらに,リンパ球,マクロファージなどに感染して所属リンパ節に運ばれ2~3日後に一次ウイルス血症をきたす。その後,全身の網内系リンパ組織に広がり,感染から5~7日後に二次ウイルス血症を生じ臨床症状が出現する。診断は特徴的な発疹やKoplik斑などの特有の臨床像(後述)によって行われることが多いが,咽頭ぬぐい液や血液,髄液からのウイルスの分離もしくはPCRによる遺伝子の検出,血清検査による急性期の麻疹IgM抗体の検出,急性期と回復期のペア血清での麻疹IgG抗体の有意上昇(抗体価4倍以上の上昇)など,確定診断が必要となることもある。ウイルスの分離やPCRは健康保険適用がなされていないため,血清ウイルス抗体価による診断が通常は行われるが,麻疹IgM抗体はパルボウイルスB19による伝染性紅斑患者においても上昇することがあり注意を要する1)。
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