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Ⅰ 新感染症法の公布
新感染症法は1998年10月2日,法律114号として公布,1999年4月1日に施行されたが,正確には『感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律』と呼ばれる。従来の伝染病予防法,性病予防法および後天性免疫不全症候群の予防に関する法律を廃止,統合したものである。この法律制定の目的として『人類は,これまで,疾病,とりわけ感染症により,多大の苦難を経験してきた。ペスト,痘そう,コレラ等の感染症の流行は,時には文明を存亡の危機に追いやり,感染症を根絶することは,正に人類の悲願と言えるものである。医学医療の進歩や衛生水準の著しい向上により,多くの感染症が克服されてきたが,新たな感染症の出現や既知の感染症の再興により,また,国際交流の進展等に伴い,感染症は,新たな形で,今なお人類に脅威を与えている。一方,我が国においては,過去にハンセン病,後天性免疫不全症候群等の感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在したという事実を重く受け止め,これを教訓として今後に生かすことが必要である。このような感染症をめぐる状況の変化や感染症の患者等が置かれてきた状況を踏まえ,感染症の患者等の人権を尊重しつつ,これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し,感染症に迅速かつ適確に対応することが求められている。ここに,このような視点に立って,これまでの感染症の予防に関する施策を抜本的に見直し,感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する総合的な施策の推進を図るため,この法律を制定する。』と記載されており,その基本理念は第二条に『感染症の発生の予防及びそのまん延の防止を目的として国及び地方公共団体が講ずる施策は,これらを目的とする施策に関する国際的動向を踏まえつつ,保健医療を取り巻く環境の変化,国際交流の進展等に即応し,新感染症その他の感染症に迅速かつ適確に対応することができるよう,感染症の患者等が置かれている状況を深く認識し,これらの者の人権を尊重しつつ,総合的かつ計画的に推進されることを基本理念とする。』とされている。
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