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Ⅰ はじめに
生体を構成する大きな成分である細胞外マトリックスは,古くは細胞の隙間を埋めるものであり組織と組織を区切る物理的な構造物ととらえられていたが,近年ではインテグリンなどの細胞表面受容体を介して細胞内にシグナルを伝え,細胞の増殖・分化を制御する細胞機能制御因子としての役割を担っていることがわかってきた。この細胞外マトリックスの特殊型が生体内に普遍的に存在し上皮組織を裏打ちしている基底膜であり,Ⅳ型コラーゲンやプロテオグリカンなどとともに基底膜を構成する細胞外マトリックス蛋白の一つがラミニンである。基底膜に接する細胞では,ラミニンに代表される細胞外マトリックス蛋白との接着により細胞内にシグナルが伝わり,増殖・分化や形質の発現が制御され,その機能調節が行われている1,2)。
一方,癌は上皮細胞に生じた遺伝子変異により悪性化した細胞が,正常の制御機構から逸脱し正常構築を失い自律的増殖能を獲得した病変である。さらに癌細胞はプロテアーゼ活性や細胞遊走活性を増大することにより浸潤能を強め,所属リンパ節転移を生じ,ひいては血行性の遠隔転移を形成する。この転移形成能が,癌が生命を脅かす悪性疾患であるゆえんの一つであり,癌の制御にはその増殖を抑制するとともに浸潤や転移を制御することが必要となる。こうした癌の浸潤・転移能の亢進,言いかえれば悪性度増大の過程にはさまざまな因子が作用しているが,ラミニンの構成鎖の一つであるラミニンγ2鎖が,癌細胞の浸潤・転移能の亢進,悪性度の増大に関与することがわかってきた3~5)。そこで本稿ではラミニンの知見を紹介するとともに,ラミニンγ2鎖の発現を指標とした頭頸部癌の浸潤・転移能の評価について概説する。
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