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Ⅰ.はじめに
中下咽頭癌は喉頭癌と比較して自覚症状に乏しいため進行癌として発見されることが多く,リンパ節転移も高率に認められるため,これまで予後不良な癌とされてきた。一方,食道癌においては以前からヨード染色による早期診断が行われ,上部消化管用内視鏡(GIF)を用いた内視鏡的手術が行われてきた1,2)。さらに近年,GIFの飛躍的な高機能化,すわなち,拡大機能やNBI,ハイビジョン画質などの搭載によって,食道表在癌の発見がさらに容易となった。井上ら3)や有馬ら4)は,食道表在癌における上皮内の毛細血管異常に注目し,毛細血管の異型度を分類することによって癌の進展状況を示す『壁深達度』を予測しうることを報告し,井上分類,有馬分類として提唱している。そして,発見された食道表在癌は,これらの分類を用いた壁深達度予測によって,内視鏡的粘膜切除術(EMRC)や内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)などの内視鏡的手術の適応が判断されている。
食道表在癌では壁深達度がM1~SM3まで細かく定義されている5)。中下咽頭の粘膜には粘膜筋板がないため食道表在癌の壁深達度をそのまま流用することはできないが,2008年の第2回表在癌研究会で,中下咽頭の表在癌については『癌腫が上皮下層までにとどまるもので,リンパ節転移の有無は問わないもの』との定義が提案された。
大森ら6)は壁深達度を上皮内癌;EP,上皮下層に進展したもの;SEP,筋層や軟骨に浸潤したもの;MPと分類し,2000年2月に下咽頭表在癌のEMRCを施行して以来,EP・SEPの中下咽頭表在癌に対してGIFを用いた内視鏡治療を行ってきた。そして2010年2月までにわれわれは329病変(195例)の中下咽頭表在癌を経験し,そのうち234病変(151例)をGIFを用いた内視鏡手術で切除した。2004年に後述するELPSを開発した後は,広範囲の病変も短時間で一括切除をすることが可能になった7)。本稿では,ELPSを中心に当院で行っている内視鏡手術手技と治療成績を概説する。なお,本稿における中下咽頭表在癌の肉眼型は,食道表在癌の肉眼型分類に準じた。
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