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Ⅰ はじめに
身体障害者認定は『身体障害者福祉法』に基づいて行われる。身体障害者福祉法は,身体障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため,身体障害者を援助し,身体障害者の福祉の増進を図ることを目的として1949(昭和24)年に制定され,1950(昭和25)年に施行されたものである。児童福祉法〔1947(昭和22)年〕,生活保護法〔1950(昭和25)年〕と合わせて『福祉三法』と呼ばれるが,少子高齢化社会に向け,従来の支援費制度に代わり,障害者に費用の原則1割負担を求め,障害者の福祉サービスを一元化し,『保護』から『自立に向けた支援』に切り替えるため,2006(平成18)年に『身体障害者自立支援法』が施行された。これにより医療費の自己負担比率は5%から10%に倍増し,従来は所得に応じて決められていた補聴器など補装具の自己負担分は,原則として一律1割の負担となった。見方にもよるが,これは福祉施策の後退ともいえる。
身体障害者福祉法とは身体障害者の更生援護を目的とするが,『更生』とは必ずしも経済的,社会的独立を意味するものではなく,日常生活能力の回復を目的とするものである。福祉施策は公的なものであり,国民は平等にその恩恵を受ける権利を有する。これにかかわる医師は医学的判断を提供することによって福祉施策に参加しているわけであるから,日本耳鼻咽喉科学会(以下,日耳鼻と略す)認定の耳鼻咽喉科専門医たるものは『身体障害者診断書・意見書』や『補装具費支給意見書』の作成においては,身体障害者にとっての真の福利のために正確で公正な判定を心がけなければならない。司法の判断が下っていない現在では断定的なことはいえないが,札幌で起こった『身体障害者診断書・意見書』の虚偽記載事件などは言語道断であり,誠に遺憾といわざるを得ない。本稿では耳鼻咽喉科専門医が知っておくべき身体障害者認定に関する知識について概説する。
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