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Ⅰ.はじめに
リスクマネジメントとは医療の質を保持し医療事故を予防することにより,病院の損害賠償責任を軽減する手段であり医療訴訟件数の増加に伴い米国で特に発展してきた管理技術である1)。
日本においても1999年1月11日の患者取り違えという医療事故を契機に,医療安全に対する関心が高まり,リスクマネジメントが各病院で適用されるようになってきた。リスクマネジメントとは費用対効果の物差しで採否が決まり,『人間は間違いを起こす』ということを前提に,いかに解決するかと考え,保険を選択する考え方で,リスクの存在自体を肯定して,その対策を考える問題解決型のリスクマネジメントである。ただし日本においては事故防止(危険防止)を強く追求しており,費用対効果についてはほとんど議論されていない。事故防止はリスクマネジメントのプロセスの中で選択肢の1つとして位置づけられるもので,事故防止を追及するのであればその手法は安全管理である。つまり日本におけるリスクマネジメントは安全管理を主としたものとなっている。一方リスクマネジメントという表現もあり,これは日本リスクマネジメント協会が展開している管理型リスクマネジメントに由来している。『人間は間違いを起こす』からこそ間違いを起こさせないよういかに行動するかを前提として実施されている。結果としてリスクは発生するから,マネジメントを考えようということを表現しており,問題発生型のリスクマネジメントといえる2)。
日本の病院が目的としていることは,損害からの組織防衛ではなく,医療事故防止である点を考えると,日本のとるべき管理技術はリスクマネジメントということになる。
ところで大学病院などの大病院と中小病院の大きな違いは,資源(職員)と資金面での規模の大きさであろう。ただし,お金と人員をかければ医療事故が起こらないということはなく,規模が大きいためかえって間違えを起こす可能性が大きくなる。資金・資源の少ない中小病院でも十分に工夫することで医療事故を少なくすることができ,実際に成功している病院も多数存在する。そこで中小病院におけるリスクマネジメントについて考えていきたい。
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