特集 頭頸部再建外科―日常臨床から理論まで
Ⅴ.日常の診療で具体的に困ったときの形成手術
1.頸動脈の扱い
行木 英生
1
1静岡赤十字病院耳鼻咽喉科
pp.169-176
発行日 2009年4月30日
Published Date 2009/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101435
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
Ⅰ はじめに
日常臨床でみる頸動脈の疾患としては,頸動脈周囲から病変が進展してきた場合と,頸動脈壁から内腔にかけて病変が存在するものとに分けて考えると,前者の病態には,動脈壁と強い癒着がある頸動脈小体腫瘍やグロームス腫瘍などの自律神経系腫瘍や,動脈壁周囲に浸潤してくる頭頸部癌があり,後者には,動脈内腔の治療を必要とする頸動脈狭窄症や,術後合併症である頸動脈破裂,さらに自傷や外傷による頸動脈切創が挙げられる。これらに対する外科的治療は,一時的にでも脳血流の遮断を余儀なくされることがありうるので,切除と再建のいずれに対しても高難度の手術手技が要求されるうえに,脳血流遮断による脳障害のリスクも負わざるを得ない。頸動脈を外科的に扱う診療科は主として頸動脈壁外は耳鼻咽喉科,頸動脈壁とその内腔を含めて総頸動脈部分は血管外科,内頸動脈内腔は脳神経外科が担当し,遊離移植における血管吻合は形成外科が担当することが多いが,施設によっては一元的な治療として頭頸部外科医が頸動脈の切除や再建あるいは血管吻合まで担当することもある。
本稿では日常臨床において頸動脈に対して何らかの処理をせざるを得ないこれらの病態に対する手術中の対応について症例を挙げて解説する。
Copyright © 2009, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.