鏡下咡語
がん医療に想う
海老原 敏
1
1佐々木研究所附属杏雲堂病院
pp.406-407
発行日 2008年5月20日
Published Date 2008/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101274
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Ⅰ.がん医療へのかかわり
がん診療に従事して43年経った。がん患者さんをみて最初に強い衝撃を受けたのは,専門課程の3年生のポリクリで,右上顎拡大全摘を受けた老女をみたときである。眼部から頰部にかけての皮膚欠損に恐ろしいものをみた気がしてとても自分が進む道ではないと思ったものだ。医学部6年間の学生生活と1年のインターンを前橋で過ごし第一外科か法医学教室に入ることを考えていたが,東京に戻らざるを得なくなった。東京に戻り,どこの教室に入るか一から探さなければというときに,創立後日の浅い国立がんセンターはどうかということになり,兄を介して当時の手術部長竹田千里先生にお会いすることになった。
がんセンターに入ってから,当初は5~6年,がん診療全般にわたっての知識を得て次のことを考えようと思っていた。当時は外科の医局に入れば,10年は無給が当たり前の時代に,半年でフルタイムの非常勤に,その1年5か月後には耳鼻咽喉科の医員として採用され麻酔科併任となった。がんセンターでは救急蘇生と全身管理を身につけるためまず麻酔科に2年いる予定であったが,1年10か月経ったとき,当時麻酔科医長だった方が米国の大学の教授として行かれることになり,麻酔科標榜医取得の直前に指導医不在となり資格取得のために300例の麻酔例を届けなければならないことになり,予定より半年長くなった。この2年半に及ぶ麻酔医のときに術野のよく見える特等席でさまざまな外科医の手技を間近に見ることができたのが,後の手技の開発に大きな力となった。
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