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I.はじめに
横紋筋肉腫は,成人では2~5%を占めるに過ぎない稀な腫瘍であるが1),小児では最も頻度の高い軟部組織肉腫(soft tissue sarcoma)である(小児軟部肉腫の約60%)2)。光顕的に骨格筋分化を示唆する横紋を腫瘍細胞中に認めることがあること,免疫組織化学的にmyoglobin,desmin,muscle actinなど筋特異的蛋白がよく染色されること3,4),また分子生物学的にMyoD1やmyogeninなどいわゆる骨格筋分化決定・誘導遺伝子の発現が認められることから5),未分化な骨格筋芽細胞を発生母地とする悪性腫瘍,あるいは近年では骨格筋の再生過程に関与する筋衛星細胞(satellite cells)に発生起源を有する悪性腫瘍とも考えられている6)。しかし,横紋筋肉腫は,本来骨格筋のないあらゆる解剖学的部位から発生すること,骨格筋形質の発現という共通の特徴はあるものの,臨床および組織・生物学的に明らかに異なる性格をもつ腫瘍細胞群から構成されていることから,異なる発生段階の胎児期未分化間葉系細胞に由来する,異なる遺伝子異常をもった,少なくとも2つ以上の異なる悪性腫瘍の一群と考えることもできる。
横紋筋肉腫は,世界最大の横紋筋肉腫スタディ・グループ(Intergroup Rhabdomyosarcoma Study Group:IRSG)の5期30余年(1期スタディ1,000余登録例/6~7年間)に及ぶ共同臨床研究により,以下のことが明らかとなってきた。すなわち, 1)腫瘍の外科的切除のみでは治癒が望めないこと, 2)化学療法・放射線療法が有効であること,また 3)それらの組み合わせとタイミングが治癒への鍵であること, 4)発生部位や病理組織型,腫瘍の大きさ,進展範囲などの予後因子の組み合わせによりリスク分けができることなどが明らかにされてきた2,7)。すなわち,本腫瘍は,初診時の適正な病期および病理診断とそれに基づき分類される該当リスク群に応じた適正な層別化集学的治療,特に初期治療が患者の生命予後を左右するといっても過言ではない腫瘍である。小児腫瘍や若年成人の軟部組織腫瘍においては,常に横紋筋肉腫を念頭におき慎重に診断と集学的(複数科連携協同)治療,あるいは専門医への紹介に当たらなければならない。
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