特集 耳鼻咽喉科疾患と高齢者(65歳以上)への対応
1.症候
7)味覚障害
阪上 雅史
1
1兵庫医科大学耳鼻咽喉科
pp.671-677
発行日 2006年8月20日
Published Date 2006/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411100736
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Ⅰ.はじめに
味覚・嗅覚の基礎研究は1991年にBuck & Axel1)が嗅覚レセプターの遺伝子を明らかにして以来,分子生物学の進歩とともに飛躍的な発展を遂げた。一方,味覚・味覚の臨床は,視覚・聴覚・平衡覚などの臨床に比べて遅れている感はいなめない。その理由として,生死に直接関係がないこと,感覚の疲労現象がほかの感覚より起こりやすいこと,症状の発現や進行が一般に緩徐で自覚されにくいこと,他覚的検査が困難なことなどが挙げられる。
しかし,活動性の低下を余儀なくされている高齢者の味覚障害を考える場合,味覚が十分に生かされた生活は栄養摂取面のみならず,生活の幅を広げる意味でも重要となる。さらに,近年のQOLに対する要求に加え,わが国における高齢化社会のはじまりと相まって,高齢者の味覚障害に対する治療機会は増加している。
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