特集 上気道アレルギーを診る
1.鼻アレルギーの臨床像
1)アレルギー性鼻炎の症状と重症度,QOL
大久保 公裕
1
1日本医科大学耳鼻咽喉科科学教室
pp.7-13
発行日 2004年4月30日
Published Date 2004/4/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411100570
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I.症状の成り立ち
1.鼻粘膜のアレルギー反応
アレルギー性鼻炎は鼻粘膜局所のアレルギー反応であり,マスト細胞上のIgEが仲介する抗原抗体反応の結果,鼻炎症状が発現する。鼻粘膜には少なくとも2種類のマスト細胞があり,粘膜型(Tタイプ),結合組織型(TCタイプ)と呼ばれている。Okudaら1)の報告で,粘液上皮層にある粘膜型マスト細胞がアレルギー反応に重要であることが確認され,抗原と結合しメディエーターを放出している。アレルギー性鼻炎の特徴である発作性のくしゃみはこの放出されたメディエーターの中のヒスタミンが三叉神経知覚枝終末を刺激し,くしゃみ中枢を介して生じる。この反射が軸索反射を誘発し,粘膜腺が刺激され鼻汁過多が生じる。メディエーターが血管系のそれぞれの受容体に働くと鼻閉が生じる2)。これらのくしゃみ,鼻汁,鼻閉がアレルギー性鼻炎の3大症状であり,患者の重症度とquality of life(QOL)を規定する。
長年,通年性アレルギー性鼻炎があると,鼻粘膜は上皮細胞の杯細胞の増加,繊毛の変化,上皮層の増殖,粘膜腺組織の増加などの変化が生じ,種々の細胞浸潤が慢性的に認められるようになる。これら変化が生じると,可逆性であるアレルギー反応といえども非可逆性の鼻粘膜腫脹が出現する。これら全ての変化が鼻粘膜でのアレルギー性炎症であり,軽症のものから非可逆性の難治性のものまである。非可逆性の粘膜変化は,スギ花粉症などの季節性アレルギー反応では生じにくいものである。
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