特集 緑内障診療ガイド—今日の戦略
Ⅱ.治療の実際
3.手術治療の実際
隅角癒着解離術
上野 聰樹
1
1聖マリアンナ医科大学眼科学教室
pp.220-221
発行日 2002年9月10日
Published Date 2002/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410907918
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病態の進行から考える術式
慢性閉塞隅角緑内障発症の本態は,瞳孔領の比較ブロックにより後房に房水がうっ滞し,慢性的に周辺虹彩が押し上げられて線維柱帯に接近する状態が持続し,やがて周辺虹彩前癒着(peripheral anterior synechia:PAS)が形成されて発生する物理的房水流出障害である(図1)。その病態の進行から,本症に対する第一義的治療は,開放隅角緑内障の場合とは異なり,まずレーザー虹彩切開術(laser iridotomy:LI)にて比較瞳孔ブロックの解除,あるいはplateau irisのときにはレーザー隅角形成(laser gonioplasty:LGP)の虹彩の熱収縮を利用した物理的開大であり,その後に薬物療法を行うという手順を踏む。さらに本症においては水晶体の存在そのものが狭隅角の主因となっていることも少なくないため,白内障が進行している場合には水晶体摘出+IOL挿入術単独でも眼圧が一定量下降する。しかし50%以上にわたる広い範囲にPASが形成されてしまうと,上に述べたような治療だけで眼圧を十分コントロールすることが難しくなる1)。本疾患のように狭隅角・浅前房である状態で不用意に濾過手術を行うと,浅前房が増強したり,場合によって悪性緑内障を誘発する危険がある。
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