特集 EBM確立に向けての治療ガイド
結膜疾患
はじめに—結膜疾患治療のEBM
熊谷 直樹
1
1山口大学医学部分子感知医科学講座眼科学
pp.96-97
発行日 2001年9月28日
Published Date 2001/9/28
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410907502
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結膜炎,翼状片をはじめとする結膜疾患は臨床でしばしば遭遇する疾患である。これらの結膜疾患は軽症例が多く,失明に至る重症例は少ない。このために眼科研修や臨床研究の対象としてはあまり重要視されない場合もある。このために,EBMを導くに足る臨床データの蓄積が内眼部の疾患に比して少ないともいえる。われわれは,これらの疾患は現在用いられている治療でほとんどの結膜疾患を適切に治癒に導くことができると仮定して日常診療を行っている。
しかしながら,この仮定は必ずしも正しくないようである。「アレルギー性結膜炎」の項で高村先生が記載されているように二重盲検にて抗アレルギー薬の単独投与で中等度以上の改善を示す症例は一般に60〜75%程度であり,4人に1人は薬剤が無効である。実際にはプラセボ投与群でも,実施された国を問わず一般に40%程度が中等度以上の改善を示している。したがって抗アレルギー薬の点眼液に含まれる薬物の薬効で症状が改善する症例は20〜35%程度に過ぎないことになる。われわれが,抗アレルギー薬の有効性として判定しているものの大半の有効性が抗原や生理活性物質を洗い流すことや,点眼することによる安心感や期待感,アレルギー結性膜炎の季節性の自然寛解によって得られている可能性がある。また,「翼状片」の項で近間先生が記載されているように,翼状片の患者では初回に結膜有茎弁移植を行った患者でも17%に再発がみられ,再発した患者ではさらに治療成績が悪い。このように,日常われわれが接している結膜疾患に対して,すべての症例を治癒せしめるレベルには達していないのが現状である。
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