やさしい目で きびしい目で・13
『楽しく? お仕事?』
林 みゑ子
1,2
1森下町眼科クリニック
2前:自治医科大学
pp.57
発行日 2001年1月15日
Published Date 2001/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410907161
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最近マスコミに登場する人々が語るのを見ていると,難しい試練や任務に対して「楽しくやります」と答えるのが格好いい,という風潮がありませんか。そりゃ,仕事がいつも楽しくて,周りもいい人ばかりなら,こんなにいいことないですよねぇ。
しかし,若いヒトがそんな台詞を吐くのを聞くたび,また眼科の研修医が仕事が辛いとか楽しくないとか文句言うのを聞くたび,私の心の中のイジワルバアサンが,「そおねえ,でもそれを言うのは10年早いんじゃないの?」とつぶやくのだ。だってそうでしょう。日本の現在の医学教育では,医学生が眼科の臨床を知っているはずもなく,医学部を出たての眼科のガも知らない研修医が,どうして楽しく仕事ができるんでしょう。知らないことだらけに加え,それこそ周りのオジさん,オバさん,おニイさん,おネエさん(教授はまだしも助教授,講師,たまに訪れる非常勤講師などだけでなく,もちろん医局中の先輩諸氏)の顔と専門領域や過去のアレコレ(これが結構大事だったりする)もインプットしなければならない。いや,それより何より,眼科所見をとるための技術を磨かねばならない。そしてようやく所見がとれるようになったら,今度はその所見から,その場で診断,治療の方針が出なければならない。
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