文庫の窓から
眼療器具の種々(2)—江戸時代眼科諸流派の古写本に見る
中泉 行史
1
,
中泉 行弘
1
,
斎藤 仁男
1
1研医会
pp.2010-2011
発行日 1999年12月15日
Published Date 1999/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410906665
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前回,江戸時代の眼科各流派の古写本に収められている眼療器具の名称を列記したが,もう少し紹介しよう(下表参照)。
このように17世紀から19世紀の間のごく限られた眼科諸流派の眼療器具の名称などを列挙したが,その種類は時代が後世に及ぶほど多くなり,その改良や進歩の跡がうかがえる。特に従来の馬島流眼科に大改良を加えた漢蘭折衷眼科の「眼科集要折衷大全」(馬島円如著)や「続眼科錦嚢」(本庄普一著)以降,洋式眼科を採り入れた眼科書に所載された眼療器具をみる限り,その進歩は以前と比べて格段の差が認められる。このことは,口伝や秘伝をもって一子相伝の非公開時代と蘭方の西洋式眼科を導入した公開時代の差を意味するものであろうか。それにしても,あらゆる面で科学的環境の整っていなかった時代に,こうした立派な眼療器具を次々と考案し,創作してきた先人たちの努力は真に貴重なもので,今日の医療器具発達の礎となっている。
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