Japanese
English
連載 眼の組織・病理アトラス・156
網膜と視神経乳頭面の星状膠細胞過誤腫
Astrocytic hamartoma of the retina and optic disk
猪俣 孟
1
,
馬場 恵子
1
Hajime Inomata
1
,
Keiko Baba
1
1九州大学医学部眼科学教室
pp.1740-1741
発行日 1999年10月15日
Published Date 1999/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410906615
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
星状膠細胞過誤腫astrocytic hamartomasは星状膠細胞から成る膠腫gliomaの一種で,網膜,視神経乳頭面および視神経に発生する。網膜と視神経乳頭面の星状膠細胞過誤腫は,幼児や小児の眼底検査に際して,視神経乳頭周囲網膜または視神経乳頭面に白く半球状に盛り上がった境界鮮明な腫瘤として観察される(図1,2)。
病理組織学的には,腫瘍は紡錐形あるいは毛髪状に細長く伸びた星状膠細胞(図3),すなわちpilocytic astrocytesまたはfibrous astrocytesから成るので,juvenile pilocytic astrocytomaとも呼ばれる。しばしば顔面皮膚に結節硬化症tuberoussclerosisを伴っているが,必ずしも全例そうとはいえない。眼底の腫瘤は,幼児期にはやや柔らかい感じで白色調も淡く,網膜芽細胞腫との鑑別が難しい。長ずるにつれて,腫瘍内に石灰が沈着して(図4),より白色調が強くなり,多数の白色顆粒が集合したようになる。この状態が「桑の実状」“mulberry appearance”と表現されている。桑の実は黒紫色に熟す。星状膠細胞は血管分布と密接に関係し,腫瘍内には血管が豊富で(図5),臨床的に網膜血管腫あるいは悪性黒色腫などと診断されることがある。
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.