特集 オキュラーサーフェスToday
Ⅰ 難治性角膜疾患と新しい治療法
フィブロネクチン,表皮成長因子(EGF)など
三島 弘
1
1近畿大学医学部眼科学教室
pp.53-56
発行日 1997年10月20日
Published Date 1997/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410905598
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
角膜上皮を構成する角膜上皮細胞の細胞活性は活発で,角膜上皮が損傷を受けたときには損傷部周囲の角膜上皮細胞が移動することによって,上皮欠損部は速やかに再被覆される。このことから,多くの場合,角膜上皮欠損は閉瞼や感染予防を行い欠損部が自然に治癒することを観察するだけで十分であった。しかし,糖尿病合併例や角膜ヘルペス後,三叉神経麻痺眼に生じた角膜上皮欠損では,今までのような消極的な治療法では上皮欠損が遷延化し,角膜潰瘍などの重篤な病態に進行することがしばしば生じる。近年,細胞生物学の発達によって細胞外マトリックス(コラーゲン,ラミニン,フィブロネクチンなど)やサイトカイン(成長因子,インターロイキンなど)が角膜上皮細胞の細胞活性を制御していることが明らかとなってきた(図1)。その結果,従来の治療法では難治であった遷延性角膜上皮欠損などの症例に対して,角膜上皮細胞の細胞活性を調節することで積極的に上皮欠損の治癒を促進しようという新しい治療法が開発されつつある。この項では,現在実用になりつつある治療法の原理と実際について概説したい。
Copyright © 1997, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.