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緑内障は眼圧と密接に関係しており,眼圧の高いほど,緑内障症状の一つである視野の悪化進行の危険性は高くなる。正常眼圧緑内障においても眼圧の関与は確実で,眼圧はできるだけ低く保つように治療が行われている。この眼圧は眼内へ流入する房水量と眼外へ流出する房水によって規定される。眼外への流出は線維柱帯を通り,シュレム管から静脈への道と隅角部毛様体から毛様体筋,脈絡膜を経て静脈から眼外へという道の2つの道が考えられており,それぞれconventional, un—conventional (uveoscleral) routesと呼ばれているが,私が興味を覚えたのはむしろ房水流入のほうで,眼圧が高くなれば正常の眼では房水産生は自動制御装置が働き低くなるにちがいない,当時この房水産生低下をpseudo facilityと呼んでいたが,一方,眼圧が低くなり過ぎると房水産生は増すにちがいないが,どのような関係が眼圧と房水産生との間にはあるのだろうかという疑問があった。房水産生のみを測定できる方法があれば,眼圧を変化させることによって房水産生量との関係は容易に知ることができる。この房水産生量を直接測定する方法は当時なかったので,ぜひ房水産生量を測定したいと考えてサクションカップを家兎の眼に合うように作製してconventional routeを遮断して房水産生量を直接測定する方法を考えた。眼圧と房水産生量とは,眼圧が上昇すれば産生量は減少し,低くなれば産生量は増加することにはちがいないが直線的な関係ではなく,眼圧と房水産生量との間にはシグモイド曲線的関係が得られた。
この方法で数種類の薬物の房水産生におよぼす影響を調べたが,その一つにプロスタグランディンズ(PGs)があった。PGF2α, PGEはいずれも眼内に入れると一過性に眼圧が上昇する。この眼圧上昇は房水産生を直接測定してみると房水産生量の一過性の増加によることがわかった。実験は2〜3時間継続して測定するが,当時の眼圧測定の結果を数時間にわたり(9〜10時間)測定していたものも中にはあった。それを詳しくみてみると,PGsで眼圧は一過性に上昇し,投与後30分から1時間でピークに達し,その後はいずれも徐々に眼圧が低くなっていき,2〜3時間で元のレベルまで低下し,その後はさらに眼圧は低下し続け,9〜10時間後には10mmHg前後も眼圧が低下していた。
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