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特集 第48回日本臨床眼科学会講演集(3)
特別講演
硝子体とその空間—眼内組織とのかかわり
Vitreous body and its occupiing space. Relatienships with surrounding tissues.
玉井 信
1
Makoto Tamai
1
1東北大学医学部眼科学教室
pp.827-833
発行日 1995年5月15日
Published Date 1995/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410904296
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緒言
硝子体が混濁したために視力が低下してもなす術もなかったのはそれほど遠い過去ではない。硝子体手術の基礎的研究が連続して発表された1970年代前半は,“なるほど”と思ってもその手術器械が発売された以後に起きた普及と急激な眼科手術の変革まで予測した人は少なかったに違いない。時代の要請もあったし,時を同じくして発達したレーザー光凝固装置,顕微鏡手術の普及他もろもろの要素が深くかかわっている。もちろん手術効果が絶大だったことが普及のために大きな力となった。
このような経過ではあったが,自らの取組の経緯を振り返えると初期は慎重であった。慎重になった原因の1つは脳と同じ組織である網膜に直接触れることや,眼底は微小血管がむき出しであることにあった。しかし注意さえすれば良い結果が得られるため,その後は華々しい器具の開発,灌流液の改良などに比べ,硝子体腔にこのような手術操作を加えたときの,それを取り囲む眼内組織の反応については一部の解剖学的,生化学的方法を除いて研究がなされてこなかったように思う。しかし適応症例が広がり,重篤な眼底疾患を手がけようとするほどその手術操作によってどのようなことが起きているかを正しく理解することは大切なことと思われる。特に近年は研究技術が進歩し,酵素化学,免疫組織学,分子生物学の手法を用いて細胞,膜,細胞内小器官,核酸の働きをDNA, RNAそして蛋白のレベルで解析することが可能になった。そこでこれらの方法を用いて明らかになったことと総括し,さらに硝子体腔が血液一眼柵の内側であることを利用した積極的な治療法も含めて21世紀における硝子体手術発展の可能性を考えてみたい。
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