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高齢者であろうとなかろうと,基本的には手術を行うときの体位に違いはない。白内障手術や緑内障手術は比較的短時間で終わるが,硝子体手術や網膜剥離復位術では手術時間が長時間になることが多い。手術は仰臥位で行うが,手術中に背中や腰が痛くなることを減らすように,手術用ベッドの上に柔らかいフリーシーシーツを敷いて,その上に患者を寝かせる。清潔シーツが口をぴったりと覆うと呼吸がしにくくなるので,それを防ぐ目的で,また手術中に息苦しいと訴えたときに酸素を流す目的で,口と鼻孔の上に酸素を流すチューブをつないだ金属製のマスクを置いて固定する。チューブの先端が鼻孔内に少し入るように固定して,その上にディスポーザブルのマスクを置いてもよい。手術用顕微鏡下の手術では,手術中に患者の頭部が動くと,術野が術者の視野からはずれて手術操作が煩雑になる。患者の頭部を固定する目的と,術中に術者の手を安定させるための手首を置く台の目的で箱枕(半田屋,イナミ)を使用し,患者の頭部をその中に入れる。硝子体手術や白内障手術を行うときには,箱枕では灌流液が術野周囲にあふれやすいので,馬蹄形のアームレストを使用することもある(図1)。
腰の曲がった高齢者に手術を行う場合には,普段の手術と同じようにはいかないことが多い。背中の下側と足の下側に布製の枕を入れ,頭の下には板状の枕を積んで患者が手術中に苦痛を訴えずに安定した姿勢をとれるようにする(図2)。この場合には箱枕や馬蹄形のアームレストは使用できない。頭の下に枕を積んだのに相当して,手術用顕微鏡を通常よりも高い位置で使用することになるので,術者は椅子の高さを高くし,さらに背を伸ばすようにするなど,無理な姿勢で行わざるを得ない。
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