- 有料閲覧
- 文献概要
peaとはえんどう豆,podは名詞ではえんどう豆のさや,動詞ではさやをむくこと,pea—poddingとはさしづめ,えんどう豆のさやから豆をつるんと出すことを指していると思われる。白内障術後の場合,えんどう豆はIOL,さやは水晶体嚢である。さて,えんどう豆であるIOLをさやである水晶体嚢からつるんと出してしまう力は,術後の水晶体嚢の収縮である。それだけだろうか? 術後に水晶体線維が再生されるが,主に赤道部で産生され,その産生は永続的である。次から次へと作られる新しい水晶体線維に押されて古い再生水晶体線維は赤道部から中央へと移動していく。嚢内にあるIOLのループも,再生水晶体線維から中央へと向かう力を受けることになる。この力もpea-poddingを起こす一因となっていると思われる。毎年,毎年,新しい入局員が入ってきて,いつのまにか大学から出されてしまうといったところだろうか。このパターンで押し出されるのはループだけではない。水晶体線維も嚢外に押し出されてしまう。押し出された水晶体線維は房水の影響により膨化する。これが,後嚢上にある場合はElschnig's pearls,眼房内に遊離して,浮遊した場合がlentoid of Thielであると筆者は考えている。
再生水晶体線維は嚢外固定の場合でもIOLに影響を及ぼす。水晶体線維の再生によりいわゆるSoemmerin's ringが形成される。すなわち前嚢が残っている周辺部が膨らみ,水晶体嚢がドーナツ状のリングとなる。これがSoemmering's ringである。さて,嚢外固定されたループは周辺部水晶体嚢の上にのっているが,Soemmering's ringの形成に伴って押し上げられ,IOLの前方移動が起きる。ひどい場合は,ループまたはIOLが虹彩の裏面に触れ,遷延性虹彩炎,pigment dispersion,続発性緑内障などを引き起こすのである。あなたの症例も10年後には……。
Copyright © 1993, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.