昨日の患者
VIP
pp.56
発行日 1993年10月30日
Published Date 1993/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410901867
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VIPにもいろいろある。先日その筋のボスが来院した。今52歳,19歳の頃から覚醒剤をやり数年間ムショ暮しで,出てきたばかりという。その間ほとんど見えなくなったという。VIP症候群にかからないためには,平常心で,このような筋の人は特に普通に取り扱うことである。皆に言い含めて特に“荒っぽい”?検査員を配した。よほど見えないらしくNCTの顎台に,顔のあちこちをぶつけて,付添のパンチパーマの兄さんに「親分,大丈夫ですかい」と聞かれている。診察すると網膜色素変性症があり,また前房が浅くレーザー虹彩切開の跡があり,水晶体は強度に混濁している。ECCEとIntercapsular法でIOLを挿入。翌日,「先生,見えます」と喜んでいる。誰もが普通に接したので快適な3日間だったらしく喜んで退院して行った。「これでまた,仕事ができます」「私にできることなら何なりと言って下さい」と言ってくれたが,依頼することは当面何もなさそうである。
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