連載 眼の組織・病理アトラス・84
眼瞼および眼窩の類皮嚢胞
猪俣 孟
1
1九州大学
pp.1692-1693
発行日 1993年10月15日
Published Date 1993/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410901836
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類皮嚢胞dermoid cystは分離腫choristomaの一種で,身体の表面以外の部位に本来存在しない皮膚様の組織が存在し,それが嚢胞を形成する先天発育異常に基づく腫瘤である。発生原因は,胎生期に表層外胚葉の一部が骨の縫合部に沿って残存したためである。眼瞼と眼窩は類皮嚢胞の好発部位で,眼瞼の類皮嚢胞を表在性類皮嚢胞superficial dermoid cyst,眼窩内の類皮嚢胞を深部類皮嚢胞deep dermoid cystとも呼ぶ。表在性類皮嚢胞は,眼瞼の外側では前頭頬骨縫合fronto—zygomatic sutureに沿って(図1),眼瞼の内側では滑車のすぐ下方にある眼窩骨の縫合線に沿って発生する。深部類皮嚢胞は,眼窩外側では前頭頬骨縫合に沿って,または涙腺窩,内側では滑車のすぐ後で,奥では上眼窩裂に沿って生じる。
類皮嚢胞は皮膚様の構造からなる嚢腫であるので,皮膚の分泌物やケラチンなどが内腔に貯留し,徐々に大きくなる。眼瞼の類皮嚢胞は早期に腫瘤として触知されるようになり,嚢胞が比較的小さいうちに家族が気づいて,幼児期に眼科を受診する。一方,眼窩内のものは眼瞼のものよりも大きくならないと気づかず,受診は10歳台以降になることが多い。まれに,増大した嚢胞のために眼球突出を生じる。
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