連載 眼の組織・病理アトラス・39
結膜の悪性黒色腫
猪俣 孟
1
1九州大学
pp.10-11
発行日 1990年1月15日
Published Date 1990/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410900002
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結膜には母斑(母斑細胞性母斑 nevocellularnevus)が高頻度にみられるが,悪性黒色腫malig—nant melanomaは比較的少ない。結膜の悪性黒色腫の多くは後天メラニン症aquired melanosisから発生するといわれている。
結膜悪性黒色腫の臨床的な特徴は中高齢者の結膜に褐色の粉をまき散らしたような状態がみられることである(図1)。散布された褐色の色素の境界は不鮮明で,ときには結膜から角膜の表面にも広がっている。まれには角部付近で結節状の隆起を形成することもある。前者を表在性拡散型悪性黒色腫superficial spreading malignantmelanoma,後者を結節型悪性黒色腫 nodularmalignant melanomaと呼ぶ。表在性拡散型は腫瘍細胞が結膜面に対して平行に広がっていることを意味し,結節型は腫瘍細胞が深部に向って浸潤していることを示している。結節型はより悪性化の徴候とされている。結膜の悪性黒色腫は,初期には表在性拡散型がほとんどで,腫瘍細胞は結膜上皮あるいは角膜上皮内に広がる。しかし,表在性拡散型でも進行して腫瘍細胞の増殖が活発になると,腫瘤を形成して結節型のようになる(図2)。腫瘤は結膜だけでなく,角膜の表面にも形成される(図3)。表在性であるうちは,腫瘍の発育は緩慢であるが,いったん腫瘤を形成すると,きわめて急速に発育し,肺臓や肝臓に遠隔転移をきたす。
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