増刊号 実戦 メディカル眼科治療アップデート
メディカル眼科治療 各論
Ⅴ ぶどう膜炎・眼内炎症・腫瘍性疾患
トピックス
乳児血管腫に対するβブロッカー療法
藤本 雅大
1
1京都大学大学院医学研究科眼科学
pp.300-301
発行日 2019年10月30日
Published Date 2019/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410213363
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疾患概念
乳児血管腫は毛細血管内皮細胞が増殖する良性の血管性腫瘍であり,多くは自然消退するため,経過観察となる。有病率は日本人で約1〜2%であり1),乳児期では最も頻度の高い腫瘍の1つである。男女比はおおよそ1:3と女児に多く,発現部位の6割は頭頸部である。出生時には何も認めないか,もしくは薄い紫斑か紅色の丘疹を認める程度であるが,生後2週間を経過した頃から徐々に病変が顕在化し,3〜5か月にかけて急激に病変が増大する。サーモンパッチなどの血管奇形であれば,大きさは変化しない。
乳児血管腫の病変が増大する1歳半頃までの時期は「増殖期」と呼ばれ,それ以降に自然に病変が消退していく「退縮期」は5歳頃までで,5歳以降は「消失期」と呼ばれる。「消失期」といっても,必ずしも病変が完全に消失するわけではなく,未治療患者の25〜69%で毛細血管拡張による発赤もしくは皮膚のたるみが生じたり,線維性組織や脂肪織に置換され瘢痕が残存したりする。また,眼周囲に発症した場合,視力障害や乱視が生じることもあり,整容面・機能面を考慮に入れて,治療が必要となる症例もある。
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