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総合診療外来をしていると,患者さんから「先生は専門ではないかもしれないけれど……」と遠慮がちに目,耳,皮膚などに関するさまざまな訴えを聞くことがある。また,夜間の救急外来をしていると,「急に見えなくなった」「眼外傷」「眼異物」といったことを経験するが,これらは決して頻度が多いわけではなく,忘れた頃にやってくる。プライマリ・ケア医や救急医は眼科医とは違い,まれにしか経験できない眼疾患に,ほとんど道具を使うことなく判断することを迫られる。「正直,無理な話である」(心の声が叫びを上げる……)。それでも何とか道具を使いこなしたいと思い,眼科医に眼底鏡の使い方について相談してみると,「直像鏡はほとんど使わない」とあっさり退けられたりもする。ジェネラリストと眼科医では同じ眼診療を行う場合でも,まったく診療スタイルが違うのである。そんなとき,ジェネラリストと眼科医の架け橋となってくれるような書籍が登場した。本書『ジェネラリストのための眼科診療ハンドブック』である。非眼科医が困りそうなツボを熟知する眼科医が著した,ジェネラリストのための救世主のような一冊である。
本書の構成は3部構成からなり,第1部では救急外来で遭遇しそうな眼疾患でも,専門医対応が必要な疾患・病態について,「急ぐべきか,翌日でもいいのか」という視点で述べられている。第2部では,総合診療外来で患者が眼科医ではなく,かかりつけの先生に訴えそうな眼症状について取り上げており,眼科医ではなくても対応可能な眼疾患についてのアドバイスがわかりやすく解説されている。そして第3部では,われわれプライマリ・ケア医も眼科医に質問してみたい,コンタクトレンズや市販の点眼薬に関する情報がまとめられており,読みながら「へ〜」「そうなんだぁ」とついついうなずいてしまう。そして,巻頭・巻末の見返しページでは「かんたん眼科メモ」として「眼の解剖生理」「患者の年代別に頻度の高い眼科疾患」などを掲載しており,限られた紙幅を有効に活用したい石岡みさき先生の熱い思いを感じさせる。
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