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特集 第71回日本臨床眼科学会講演集[1]
特別講演
神経眼科疾患治療の最近の進歩
Recent advances in treatment of neuro-ophthalmological diseases
三村 治
1
Osamu Mimura
1
1兵庫医科大学神経眼科治療学講座
pp.293-309
発行日 2018年3月15日
Published Date 2018/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410212607
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眼科学の多くの領域で,新しい機器,薬剤,治療手技の開発により劇的な治療の進歩がみられている。一方,これまで神経眼科疾患の多くは難治性と考えられてきた。しかし,最近の薬理学的研究や病態の解明の進歩により,神経眼科領域でも新しい薬剤の開発や治療法の改良が行われつつある。本稿では,下記のいくつかの新しい治療法を自験例の結果とともに解説する。
1.イデベノンは網膜神経節細胞のミトコンドリアのエネルギー代謝を改善し,アデノシン三リン酸(ATP)産生を増加する。遺伝性視神経症に対するイデベノンの治験で,レーベル遺伝性視神経症では30%以上の患者で視機能が改善し,特に20歳以下の若年発症が最も視力良好であった。また,優性遺伝性視神経症でもイデベノンは視機能維持・改善に有効と思われる。
2.眼筋型重症筋無力症では内服薬に免疫抑制薬タクロリムスを併用することと,眼科医が治療効果の判定や手術に参加することで,患者のquality of life(QOL)を大いに改善することができる。
3.後天滑車神経麻痺,甲状腺眼症による複視は,下直筋の鼻側移動術と後転術の併用で高率に消失させることができ,その他の眼球運動障害でもさまざまな手技で患者のQOLを改善することができる。
4.眼瞼痙攣の難治例では,A型ボツリヌス毒素の注射部位数の増加と上眼瞼筋切除術によって,多くの例で症状を改善できる。
5.A型ボツリヌス毒素の外眼筋注射は,輻湊痙攣や甲状腺眼症など非共同性斜視のいくつかのタイプにおいて有用な治療法の1つであり,斜視手術中に併用することで手術効果を増大させることができる。
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