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はじめに
虚血性視神経症(ischemic optic neuropathy:ION)は,視神経を栄養する血管の循環障害により,急激な視力・視野障害をきたす疾患である。視神経への血液供給は,主に短後毛様動脈と網膜中心動脈の枝による。すなわち,前篩状板部や篩状板部では短後毛様動脈系による血流支配であり,後篩状板部では軟膜血管叢と網膜中心動脈の枝の血流支配を受けている(図1)。臨床的に,発症後の急性期に視神経乳頭腫脹を伴うものを前部虚血性視神経症(anterior ischemic optic neuropathy:AION)と呼び,前篩状板部および篩状板部の血流障害によると考えられている。一方,急性期に視神経乳頭腫脹がみられないものを後部虚血性視神経症(posterior ischemic optic neuropathy:PION)と呼んでいる。
IONは病因によっても,動脈炎性(arteritic-ischemic optic neuropathy:A-ION)と非動脈炎性(non-arteritic-ischemic optic neuropathy:NA-ION)に分類される。9割以上がNA-IONであり,A-IONの疾患頻度は少ない。この2つでは,治療・視機能予後が大きく異なるため,どちらによるものかを見きわめることは,臨床上非常に重要である。すなわち,非動脈炎性では有効な治療法はないが一般的には非進行であるのに対し,動脈炎性は早期にステロイド治療を開始しないと,高頻度で僚眼にも発症してしまう。本稿では,IONをA-ION,NA-IONに分けて,各IONの病因,臨床症状と診断を中心に概説する。
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