文庫の窓から
井上眼療書—内障眼手術篇(完)
中泉 行信
,
中泉 行史
,
斉藤 仁男
1
1研医会
pp.1416-1417
発行日 1989年9月15日
Published Date 1989/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410210953
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19世紀後半のヨーロッパ眼科は検眼鏡の発明(ヘルムホルツ,1851)によって飛躍的進展がみられたが,近世眼科手術の進歩もその創意者とまで言われた,フォン・グレフェ(Albrecht von Graefe,1820〜1870,Berlin)の活躍はめざましく,緑内障に虹彩の切除を行ったこと,白内障に水晶体摘出術の改良をなしたこと等彼の功績に負うところが多い。
こうしたヨーロッパの進んだ眼科はわが国の眼科にも少なからぬ影響をもたらした。明治時代の初めに眼科の新知識を求めてヨーロッパ各国へ留学した伊東玄伯,梅錦之烝,河本重次郎,宮下俊吉,大西克知,井上達也等の各氏はこの19世紀後半の眼科,フォン・グレフェ氏の考案した白内障手術式等を修得して帰国,それぞれの立場で門人に教え伝えた。(福島義一稿「白内障の歴史から」)本書はこうした時期に著わされたもので,ヨーロッパにおける近代眼科を伝えた白内障手術専門書の草分的存在といえる。
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