連載 眼の組織・病理アトラス・28
夕焼け状眼底
猪俣 孟
1
1九州大学
pp.110-111
発行日 1989年2月15日
Published Date 1989/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410210599
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交感性眼炎やフォークト・小柳・原田病では,発症からしばらくすると,しばしば夕焼け状眼底を呈するようになる(図1)。夕焼け状眼底は脈絡膜のメラニン細胞が減少または消失して白人の眼底のように検眼鏡で赤味を帯びて見えるようになったものである。メラニン細胞の減少は脈絡膜だけではなく,毛様体,虹彩,さらに皮膚や毛髪などメラニン細胞が存在する部位に起こり,皮膚の白斑や頭髪,眉毛,睫毛の白髪が生じる。脈絡膜の脱色素は臨床的に夕焼け状眼底として認められるが,毛様体や虹彩の脱色素は分かりにくい。毛様体や虹彩ではメラニン細胞が脈絡膜に比較して圧倒的に多く,メラニン細胞が多少減少しても目立たないからである。しかし,長年にわたって炎症が再燃を繰り返した例では,虹彩や隅角にも脱色素が起こる。虹彩では脱色素を伴った萎縮が観察されるようになる(図2)。
夕焼け状眼底は,脈絡膜における炎症が強く,多量のメラニン細胞が変性消失した場合に生じやすい。炎症の程度が軽い症例では必ずしも夕焼け状眼底になるとは限らない。また,夕焼け状眼底を呈する症例の視力の予後は眼底の赤味の程度とは必ずしも一致しない。網膜色素上皮細胞層と感覚網膜が炎症によって著しく障害されていない場合には,視力は良好に保たれる。
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