文庫の窓から
秘傳眼科全書
中泉 行信
1
,
中泉 行史
1
,
斉藤 仁男
1
1研医会
pp.592-593
発行日 1988年5月15日
Published Date 1988/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410210398
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わが国の眼科が中国(明代)眼科の強い影響を受けて発展してきたということはよく知られていることであるが,ことに中世から近世の江戸時代全期にかけては,中国からの原書の輸入と相俟って翻刻が盛んとなり,わが国で印刷した,いわゆる和刻本漢籍書が次々に出版された.「秘伝眼科全書」はこうした和刻本の一つであって,中国(明・清代)眼科専門書の和刻本,「銀海精微」「原機啓微」「審視瑤函」等と並んで最も広く行われた眼科書である.わが国で行われた版には貞享5(1688)年版,寛政3(1791)年版等があるが,これらは同一版木による重版とみられる.巻数は両版とも6巻で,貞享版が6冊綴りに対し,寛政版は3冊よりなる.貞享5年版に既に重刊の叙を掲げている処から,わが国にはそれ以前に初版が行われたものと思われる.(河本重次郎博士)
本書の貞享版には哀学淵(武夷の人,晴峰と号す)輯著,楊春栄繍梓となっていて,その跋によると青木芳庵(竹雨斉青木東庵の同族,眼療に精しく法橋に叙せられ,御医となる,東庵竹雨斉は慶安3年京都に生れ,名を澄,字元澄,東庵,松岳と号す)によって和点が施されたことが窺える.
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