文庫の窓から
眼科諸流派の秘伝書(34)
中泉 行信
1
,
中泉 行史
1
,
斉藤 仁男
1
1研医会
pp.1078-1079
発行日 1984年10月15日
Published Date 1984/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410209267
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43.眼目養生秘伝書(仮称)
わが国の仏教医学は奈良時代に最盛期をむかえ,その後仏教の消長に伴って盛衰があり,およそ近世初期に至るまで存続した。それは多くの仏教経典によってもたらされた。「金光明最勝王経」「四分律」「維摩経」「摩訶僧祇律」「十誦律」等は医学を説いた仏典としてよく知られている。「金光明最勝王経」は鎖護国家の妙典として尊ばれ,国家平安の祈願に供せられ,護国経の第一とせられた外,この経には疾病の原因が説かれ,その症状および療法なども記述されているといわれる。これら仏教医学は釈迦の医学,つまりインド医学を伝えたもので,奈良時代の医学に大きな影響を及ぼした。また,これら医学書的仏典と並んで広く読まれた経典に[妙法蓮華経」がある。この経はわが国へも早くより伝来し,推古天皇の御代に聖徳太子自ら講ぜられ,鎮護国家随一の妙典として読まれ,法の功徳と法罰を疾病にたとえて明解に述べられているので,広く一般民衆にもなじみのある経典といわれる。つまり一般民衆の問では,病気を治療するのに医薬の力にたよるよりも神仏に祈誓し,加持祈祷によってこれを癒そうとする風潮があり,この経典を読めば病気が癒るものと信じ,深遠な仏の教えとしてよりも加持祈祷の意味に解して読まれたようである。
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