連載 眼科動物園・11
α-,β-D-ブドウ糖と動物網膜の糖代謝
奥田 潤
1
Jun Okuda
1
1名城大学薬学部臨床生化学教室
pp.1028-1030
発行日 1978年6月15日
Published Date 1978/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410207697
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.α-,β-D-ブドウ糖1)
生体のエネルギー源として必須なブドウ糖にはα型とβ型の2種類があり,ご存知のように水溶液中では両者はつぎのような平衡状態で存在していて,アルデヒド型はわずかに0.003%存在しているのみである(図1)。この平衡反応は,古く1849年フランス糖化学者Dubrunfortによつてまずα型→平衡状態への変化が旋光度の変化(+112°→+52°)として確認された。一方,1892年に至つて,同じくフランス糖化学者Tanretはβ型の結晶化に成功し,これを水に溶解して平衡状態への変化を旋光度の変化(+19°→+52°)としてはじめて測定した。この反応は平衡反応であるのでα型分子はアルデヒド型を経てβ型になり,β型はα型にお互いたえず変化するのであつて,平衡状態ではα型とβ型の量的割合は36.5%:63.5%の割合であるというわけである。この平衡反応は室温(25℃)において水溶液の場合その半減期は15分ぐらいといわれ,血漿中の半減期は7分といわれている。しかし,この平衡反応をつかさどつているムダロターゼという酵素が,腎臓,肝臓,小腸中に多く含まれ,ムタロターゼが存在すると平衡反応の半減期は数秒に短縮される。
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.