眼瞼に発生したスポロトリコーシス

Sporotrichosis on the eyelid

緒言

　スポロトリクムによつて起るスポロトリコーシスが眼瞼に発生する事は稀なものであつて，我が国に於ては眼科関係の文献には未だ1例の報告もない。皮膚科関係の文献に於ても，私共の調査した範囲では眼瞼を侵したと明記した報告例は極めてまれである。外国に於ても眼瞼発生例の報告はDuke-Elder^1）によればわずかに17例にすぎないと記されて居る。

　従来皮膚科関係に於ても一般にスポロトリコーシスの報告は比較的少なかつたが，最近次第にその数を増加している。その詳細は後述するとして，我が国に於ては福代^2）によれば大正9年西沢・田辺^3）の第1例報告以来報告症例数は昭和33年迄に74例に達して居る。今回多賀は眼科に於てスポロトリコーシスの眼瞼発生例を1例経験し，皮膚科教室の協力を得て若干の知見を得たので，前年皮膚科に於ける症例と合わせて此処に報告したいと思う。

Two cases of the Sporotrichosis in the left inferior eyelids of 6 year-old males are repo-ted. They were diagnosed as histological examination of tentative exision and culture. With the treatment by Iodide of Potassium given orally both of cases healed within 8 weeks.