GROUP DISCUSSION
眼の公害・医原性疾患
今泉 亀撤
1
1岩手医大
pp.1075-1085
発行日 1975年9月15日
Published Date 1975/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410205358
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
ラットの紅涙分泌現象について
有機燐剤による眼障害の発症機序については,有機燐剤の抗コリンエステラーゼ作用により蓄積されるアセチルコリン(以下Ach)の役割が重視されている。この点を確認する意味で,演者はラットにAchを皮下注射して,その眼および付属器官にいかなる変化が惹起されるかについて検討した。Achの少量を1回皮下注射した場合,肉眼的には口のそしやく様運動,紅涙分泌,虹彩血管の拡張がみられ,これらの現象はアトロピンの前処置(腹腔内注射)により完全に抑制された。ネムブタールの前処置では口のそしやく様運動は阻止されたが,紅涙分泌は抑制されず,かなりの量の唾液が口外に排出された。このことから,口のそしやく様運動や紅涙分泌は副交感神経系を介して誘起されたものであり,さらに前者は分泌を促進された唾液の嚥下に関する運動と考えられた。
Achをくりかえし投与(20〜60回)した例では,虹彩後面上皮細胞の萎小扁平化,毛様体突起の毛細血管の拡張充盈,細胞配列の異常が認められ,これらの所見から眼内圧の変化が示唆された。
Copyright © 1975, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.