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I.緒言
網膜色素変性症の疫学的研究は本態解明の重要なアプローチの一つである。わが国においてもすでにすぐれた疫学的調査報告があり,貴重な資料を提供してきた。しかし,将来も本症の疫学は実験病理学および分子生物学的アプローチとともに必要な分野であると考えられる。特にわが国における本症の疫学的調査は必ずしも満足したものではなく,とりわけ本症の遺伝学的調査は外国と比べてきわめて貧困であつた。さらに過去の資料をみると,いずれも限られた地域集団かあるいは大学病院外来受診者を調査の対象としたものであり,全国的レベルでの広範囲な調査はおこなわれていない。著者は第19回日本臨床眼科学会の席上で静岡地方における本症の疫学の一端を報告し,その中で本症は二つの異なつたタイプのあることを述べた。つまり,早期に発病し短期間に悪化して失明する型と慢性の経過を辿つて長年にわたつて良好な視力を保持する型の存在を自験例によりたしかめたのである。今回は前者すなわちcongenitaltapetoretinal degeneration (Leber)のカテゴリーに属する本症について,その実態を把握しようと企て,全国盲学校生徒を対象として本症のアンケート調査をおこなつた。幸いにして各盲学校からご協力を得ることができ,77校の中73校から貴重な資料を提供していただいたので,ここにその調査成績を報告する次第である。
A nation-wide survey was conducted over the present status of pigment degeneration of the retina among the 9,709 attendants of 77 schools for the blind in Japan through in-quiry by mail.
1. Pigment degeneration of the retina was found in 519 out of 9,709 students (5.3%). The incidence agrees well with the hitherto accepted figures.
2. The highest incidence was present in Tokai (Southeast) District at 9% while in Kyushu District the figure was lowest at 2%.
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