談話室
視覚のサイバネティックス
北上 幸雄
pp.1099
発行日 1962年10月15日
Published Date 1962/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410202592
- 有料閲覧
- 文献概要
このほどモスクワで行われたソ連科学アカデミー生物学部総会で,人間と動物の視覚器官の研究についてそのサイバネティックスの生物学的側面をテーマとした,いくつかの報告が行われた。
素晴しい対物レンズの働らきをする水晶体が,カメラにおけると同様に,外界の像を眼底の網膜に投影する。網膜には感光細胞--錐状体と杆状態の層がある。これらの細胞の数は非常に多く,ある計算によると2000万を超える。そして,その一つ一つが,全体の像のごく微細なエレメントを受容する。そこで,各々の感光細胞から一本ずつ,「導線」--神経繊維が大脳に通じていて,それぞれの受けもち区画に入つてきた光についての情報を送つていると考えられるかもしれない。ところが,実態の事態は,これよりもはるかに複雑であり,同時に簡単である。
Copyright © 1962, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.