時の動き
サイバネティックス
K
pp.64-65
発行日 1956年5月15日
Published Date 1956/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661910134
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どうやら本格的に暖かい季節となりました。今日は毎号のこの欄と趣きをかえて,むずかしそうでむずかしくないお話を致しましよう。
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題名の通り,最近新聞やラジオなどのほか一部では,この“サイバネティックス”という言葉が流行しています。勿論この言葉自体も新しいものですが,元来“サイバネティックス”とはギリシヤ語で,パイロツトとか,舵手の技術という意味ですが,最近云われている意味は,インフオメーシヨン—つまり“情報”ということを基礎にした新しい理論のことです。と申しましても,よくおわかりにならないかもしれませんが,例えば私が明日の朝どうしても早起きしなければならないとします。そこで今夜から枕元に目ざまし時計をおいて寝ることにします。ところで朝になつて,目ざまし時計は,私が起きなければならない時間ピツタリに,けたたましくベルをならします。そこで私は,ねむい眼をこすりながら起きますが,この時計が起床暗間という“情報”を人間に送り,人間がその通信を受けとつて起きるという“行動”をおこすこと。—つまり生物や機械が送つたり,受けたりする“情報”の正体をつきとめてその原理を解明するのが,"サイバネティックス,,と呼ばれる科学なのです。
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