Japanese
English
臨床実験
眼筋麻痺に対するA.T.P.の使用経験
Application of A. T. P. on Ophthalmoplegia
河本 道次
1
Mitizi Komoto
1
1慶大眼科立川病院眼科
1Department of Ophthalmology, School of Medicine, Keiogijuku-University
pp.793-795
発行日 1962年7月15日
Published Date 1962/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410202541
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I.緒論
最近筋肉系を初め各種組織の代謝機構上A.T.P.の重要性が組織化学方面より盛んに研究され,更に臨床的には筋萎縮性疾患を初め各種の疾患の治療に応用されている。
A.T.P.(Adenosine Triphosphate)はFi—She及びLohmann等が筋収縮過程の化学的機序解明の途上に発見した高エネルギー燐酸結合を持つた化合物と云われ,生体内に於いてはその一部は直接筋肉の機械的エネルギー源となる他,筋肉A.T.P.量の不足を補い,脳血流,脳酸素消費量,脳ブドウ糖消費量はいずれも増加する。この様な機序に基いて眼科的には,眼筋麻痺の治療に応用され,その臨床報告も桑原,山浦,久保木松尾,伊藤等の諸氏より発表され,いずれも有効例が多いとされている。然しながら従来眼筋麻痺は予後の良いものが多く,その原因療法の他ヨード剤内服,ビタミンB1,K,ワゴスチグミン注射,ザルブロ注射等色々の治療が施され,好結果を得たとしても,果してこれらのどの薬品が主役を演じたのか臨床的に不明のこともあり,又自然治癒ではないかと思われる症例も少なくないことは,我々臨床家にとり屡々経験する処である。この意味に於いて,著者は眼筋麻痺に対するA.T.P.使用に際し,これらをA.T.P.非使用例と比較対照したならば,その効果,判定が更に明らかにされるであろうと思い,今回18例についての観察結果を報告する次第である。
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