特集 眼科臨床の進歩Ⅲ
光覚増強の試みの最近の發展(図9,表1)
池田 一三
1
1大阪市立医大眼科
pp.725-732
発行日 1955年4月15日
Published Date 1955/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410202207
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
わが国が太平洋戦争に突入する少し前,植村1)は正常者の胆汁分泌を高度に促進させて,脂肪の分解,吸收を容易ならしめることによつて,暗順応機能を亢進させうることを発表した。同氏は後に本法を小口氏病及び網膜色素変性にも応用し,これらの疾患の光覚の回復にも,認むべき成果を挙げたと報告した2)。これに対して私共3)を始め,2,3の学者の追試が行われたが,美田4)等が網膜色素変性において効果を認めたほかは,みな大体陰性の成績をえるにとどまつた。
敗戦後の日本は戦争を放棄し,又一時極度に悪化した電力事情が著しく好転して(少くとも見かけだけでも),停電のなくなつた今日,光覚増強の試みはあまりやかましくいわれなくなつたようであるが,夜盲の治療,光覚の機作の探究という面はもとより,運輸,交通,治安など各方面において,夜間光覚の増強を要することは,あえて戦争中におとらないように思われる。そこで私は最近この方面の研究がどうなつているかについて,少しばかり文献をさがしてみたので,次に簡単に述べてみたいと思う。
Copyright © 1955, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.