銀海餘滴
流行性肝炎の臨床
pp.562
発行日 1954年5月15日
Published Date 1954/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410201860
- 有料閲覧
- 文献概要
男女間には殆んど罹患に差がなく乳児は稀で,小児の場合は成人に較べ経過が緩慢で,持続が短かく,恢復の遅れること稀であるが,成人特に年令が増すにつれ重症且つ慢性に経過するものが少くない。一般的には20〜40日の潜伏期で黄疸の前期に入り,これは多く1〜2週で悪感,頭痛,発熱,食慾不振,嘔気,嘔吐などがあり胃,十二指腸にカタル症状が生じ,患者は非常に無気力,無能力で倦怠,疲労が強く作業意慾が低下し能率が上らない。この時期の食慾不振と作業意慾の低下は注目に値する。これを過ぎると黄疸期に入り,黄疸が症例によりかなり異るが平均約20日間続きやがて著しく軽決し,気分がよくなり,食慾が出てきて恢復するが,異常な経過をとるものに亜急性型,電撃性のものがあり,不適切な治療,毒力の強い感染,また年長者,妊婦栄養状態の悪い者に多く,不穏,嗜眠,昏睡,興奮,譫妄などを伴うものである。一旦治癒したようにみえこれが再燃することは多く過度の身体活動,食餌の貧弱,アルコールの濫用などで起る。また肝炎後の頑固な無力症として疲労,季肋下不快感消化障碍,栄養不良,感情不安定がみられることがある。慢性肝炎には活動性と非活動性とがあり,活動性では倦怠,疲労,精神抑欝,種々の程度の無力症,作業意慾の低下があり,能率があがらない。非活動性のものは胃腸症状,脂肪嫌悪,軽度疲労をみるが無力症を伴わないものである。
Copyright © 1954, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.