原著
流行性肝炎について—承前
北岡 正見
1
1豫防衞生研究所
pp.313-322
発行日 1948年10月25日
Published Date 1948/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200351
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病原體 本病の病因として過去に於ては,毒素説,アレルギー説或は種々の,寄生蟲,原蟲,細菌殊にブルセラ菌屬,變形菌,チフス,サルモネラ菌屬,赤痢菌,レプトスピラ等に依る傅染説等が擧げられたこともあつた。殊にサルモネラE群(牧)98),赤痢,腸チフス,サルモネラC,鼠チフス(山下99),廣木100))等と關係を附けようとする報告があつたが,しかし著者が屡々指摘してゐるように,本病類似症状は,細菌或は原蟲によつて惹起されたとて,それ等の菌或は原蟲を以て直ちに本病の病原體と看做されないのである。
本病が一種の濾過性病毒により惹起されるであろうことは,患者からの細菌分類が陰性であること,血液像が他の濾過性疾患のそれと一致すること,患者の血液,糞便のBerkefeld濾液を以つて人體實驗が陽性となること,その濾液を普通培養基で培養しても何等の細菌も發育しないことから明かである。我國では,本病を以て感冒の一異型であると稱える學者が多い。外國でも,Williams,Gloverの如く,本病と流感を結びつけて考るものもある。本病の急性期が如何にも感冒と酷似してゐるため,この様な錯覺を起すのであろう。著者の成績に依れば,本病原體は一種の濾過性病毒に屬し,早期血液(急性期,黄疸期の初め)竝に恢復期の口腔液或は恢復期の尿の中に排泄される。
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